介護職員の賃上げは追いつくか?―最低賃金引き上げと現場の温度差

『とやまるっと』編集室です。

2025年度の最低賃金は、全国平均で1,100円超を目指す方向で議論が進んでいます。
賃上げは歓迎すべき動きですが、介護の現場では「本当に追いつけるのか?」という声も少なくありません。

本稿では、最低賃金引き上げと介護職員の処遇改善の現実を、政策・現場・これからの3つの視点で整理します。


  1. 政策としての賃上げと処遇改善加算
  2. 現場が抱える“温度差”
  3. 介護職員の未来に必要なこと


1. 政策としての賃上げと処遇改善加算

政府は「介護職員の処遇改善」を重点政策に掲げ、これまでに以下の加算を通じて賃金引き上げを進めてきました。

● 処遇改善加算
● 特定処遇改善加算
● ベースアップ評価加算

2024年度介護報酬改定では、物価高騰や人材不足を背景にベースアップ評価加算が拡充されました。
一方で、加算取得には条件や事務負担が伴い、恩恵が一律に行き渡っているとは言い切れないのが実情です。



2. 現場が抱える“温度差”

最低賃金の上昇は全国一律で進みますが、地域ごとの物価・賃金水準、事業規模、利用者構成は大きく異なります。

現場からは、次のような声が上がっています。

● 「最低賃金に合わせて昇給しても、結局“横並び”で魅力が出ない」
● 「加算で賃上げしても、物価高や社保負担で手取りが伸びにくい」
● 「人材確保のための賃上げが経営を圧迫し、倒産リスクが高まる」

実際、2024年度は介護事業者の倒産件数が過去最多水準となりました。
背景には、賃上げと経営体力のバランスという構造課題があります。



3. 介護職員の未来に必要なこと

最低賃金の引き上げだけでは、現場の持続性は担保できません。次の3点が鍵となります。

● 加算の使い勝手を柔軟に
事務負担軽減・要件の明確化・小規模事業所への配慮で、現場に届く仕組みへ。

● 地域・規模に応じた設計
物価・賃金水準、事業所規模、在宅比率などを反映した現実的な制度設計。

● 賃金+働きやすさの両輪
シフトの柔軟化、休暇制度の充実、記録業務の省力化(ICT等)で「人が辞めにくい職場」へ。

結論として、「最低賃金を上げれば解決」ではないということ。
介護の仕事に誇りを持って続けられる環境を整えることが、業界と政策双方に求められています。




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