音楽療法について、前から聞いてみたかっとことを突っ込んで聞いてみた

音楽療法について、前から聞いてみたかっとことを突っ込んで聞いてみた。

音楽療法って、最近結構取り入れている施設も増えてますよね。

では、質問です。
音楽療法って、ご高齢者にとって何がいいのでしょうか?

『え?、、。何にって、心が安らぐとか?』
この程度しか答えられない人も多いのでは?
しかし、これでは、有名なNHKの5歳児に怒られてしまいます。

今日は、音楽療法士の道下先生にお話をお伺いしました。

道下和美
日本音楽療法学会認定音楽療法士
音・楽トレーニングBasicトレーナー
E-mail : kazu-mim@pc.ctt.ne.jp
道下和美
  1. そもそも、音楽療法とは?
  2. 音楽療法士って、どんな資格?
  3. 体にとって、いい影響
  4. 認知症高齢者にも効果的​
  5. はじめませんか?音楽療法
  6. 最後に

1. そもそも、音楽療法とは?

日本音楽療法学会では、音楽療法とは、「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること」(※1)と定義しています。
少し言い換えると、「音楽のさまざまな力や働きを利用して、個々のニーズに合わせて音楽を提供し、対象者がより豊かな生活を送れるように支援していく」というものです。
音楽療法は、乳幼児から高齢者まで、どなたでも対象としています。また、音楽療法の現場は、医療、福祉、教育、健康管理など多岐にわたり、さらに現代のストレス社会において、自己啓発や予防としても、ますます注目されています。


そもそも、音楽療法とは?


2. 音楽療法士って、どんな資格?

音楽療法士は民間資格です。私が所属している、『日本音楽療法学会』は、学会の認定校で学び、筆記試験と面接試験を経て、資格を得ることができます。または、一定の受講条件を満たす人については、学会が主催する必修講習会を受講し、筆記、面接試験を経て資格を得ることも可能です。資格取得には臨床経験も必要で、資格取得後は5年ごとの更新制度となっており、専門家として常に研鑽を積むことが義務づけられています。



3. 体にとって、いい影響​

みなさんは、自分にとって特別な曲や、懐かしい思い出のある曲を聴いたとき、心がときめいたり、当時のことが思い出されたりという経験はないでしょうか?

音楽を聴いて心が動くと、自分で意識していなくても脳や体にはさまざまな生理学的な変化が起きているのです。

過去の研究では、音楽鑑賞で 自分の好きな音楽が流れたとき、聴く音楽の種類を問わず、常に末梢血管の拡張と筋肉の緊張低下が引き起こされることが明らかにされました(※2)。さらに、ストレスホルモンが軽減されることも確認されており、音楽療法によるリラックス効果が生化学的にも検証されています (※3)。
また、歌唱活動は、腹筋を使って歌うことにより、代謝を活発にし、筋力エネルギーを増やし、呼吸を促進したり、血流量・心拍数・血圧などへの効果も期待できます。また、歌うことに集中することで認知、記憶、言語機能への刺激も得られます。

音楽療法は個人で行う場合もありますが、多くは集団で行います。人と関わりながら歌ったり、奏(かな)でたりすることで、

音楽の刺激だけでなく、楽しさの共有や社会性、協調性も生まれると考えられます。


体にとって、いい影響


4. 認知症高齢者にも効果的​

認知症高齢者における音楽療法の効果として、攻撃・興奮行動の低下、抑うつ症状の軽減、言語機能の改善、認知機能の改善、摂食行動の増加、NK細胞(ナチュラルキラー細胞;がん細胞などを攻撃する細胞)の増加、ストレス緩和などが様々な研究から明らかにされています(※4)。

音楽刺激により、耳は音を集めますが、その音は脳に伝えられ、脳で音の持つ意味を理解しています。聴いているだけでも、音楽は脳のさまざまな部分に働きかけ、影響を与えていると考えられています。
実際、認知症患者に対する音楽療法は、認知機能面の改善に有効であるという報告があります(※5)(※6)。


認知症高齢者にも効果的

認知症患者に対する音楽療法のメタアナリシス
(Vasionyté & Madison.2013を改変)
医学的音楽療法―基礎と臨床―


また、『認知症が進行し、反応が乏しいご高齢者にも効果があるのか?』というご質問をいただくことがあります。
実際、音楽療法を行なっていますと、コミュニケーションが困難になった方でも、“音楽や歌には反応がよい”という経験をよくします。

これは音楽が記憶の箱を開けるきっかけ(鍵)となり、しまい込まれていた記憶を呼び起こすことができるからなのです。

認知症になって思考能力が衰えていたとしても、感情は残っていますので、歌が歌えなくても、楽器が演奏できなくても、音楽によって感情を動かし、通じ合う瞬間を作り出すことができるのです。
さらに音楽活動は、

認知機能に影響を与え、楽しく活動に参加できることから、認知症の予防にも役立つ

といわれています。



5.はじめませんか?音楽療法

音楽療法のセッションを始める前には、参加者の方々に合わせて、どのような音楽をどのように使うかなど、目的を持ってプログラムを組み立てます。実際にセッションを行っているときは、その日の参加者の様子を見ながら、時には曲目を変えて、その集団にあった進め方ができるよう心がけています。

認知症などからもたらされる生活上のマイナス面をサポートするための支援はもちろん必要ですが、人間らしく充実感を持って生きるためのプラス面へのサポートも必要です。(※7)そのためにも、音楽活動を通して他の参加者と共に豊かな感情体験ができる楽しい時間を作りたいと考えています。



6. 最後に

音楽療法は、病院、福祉施設、学校などのほか、行政、地域、自宅など、さまざまな場所で実施されています。
今後、この記事を読み、『音楽療法を自分の施設でも取り入れてみたい』と思われた方は、ぜひ、ご連絡ください。


最後に

出典 : SON・富山 活動報告ブログ



【引用文献・参考文献】
(※1)日本音楽療法学会 公式サイト(http://www.jmta.jp/
(※2)日野原重明(監) 篠田知璋・加藤美知子(編) (1998) 標準 音楽療法入門(上)理論編 春秋社
(※3)貫 行子・吉内一浩・野村 忍 (2003) ヒーリング・ミュージックのストレスホルモンへの効果--心理学的調査と内分泌学的実験を通して 日本音楽療法学会誌 3 (1),  64-70.
(※4)高橋多喜子(2013) 補完・代替医療 音楽療法 (改訂2版) 金芳堂
(※5)佐藤正之(2014) 認知症の非薬物療法の現状と未来 認知神経科学 Vol. 15 No. 3
(※6)日本音楽医療研究会(監)呉 東進(編著)(2014) 医学的音楽療法―基礎と臨床― 北大路書房
(※7)佐々木和佳・伊志嶺理沙・二俣 泉 (2009) 認知症 ケアと予防の音楽療法 春秋社


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