『とやまるっと』編集室です。
近年、金融詐欺や投資トラブルが社会問題化する中、政府や一部の与党議員からは「高齢者向けNISA制度(高齢者NISA)」の創設を求める声が上がり始めています。
その背景には、高齢者が金融被害に遭いやすいという印象が根強くありますが、実際には年齢を問わず被害は広がっているのが実態です。
本記事では、被害の年齢別傾向や制度創設の是非について、データや政策的視点から整理します。
ぜひ参考にしてください!
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1. 金融詐欺の被害者像は多様に
警察庁や消費者庁のデータによれば、特殊詐欺(オレオレ詐欺、還付金詐欺など)では高齢者の被害が多いものの、金融商品や投資トラブルに関しては20代〜50代の相談件数も多く報告されています。
たとえば、消費生活センターに寄せられた「副業詐欺」「仮想通貨詐欺」「マルチ投資詐欺」などは、むしろ若年層・中年層の方が件数が多い傾向すらあります。
一方で、
高齢者は被害に気づかず長期間資産を搾取されるケースが多く、結果的に被害額が大きくなる傾向が指摘されています。
こうした背景から、「高齢者だけを特別視すべきではない」という声と、「高齢者には特有の脆弱性がある」という両論が存在します。
2. 高齢者NISAとは?
現在のNISA(少額投資非課税制度)は、一定の非課税枠の中で、株式や投資信託などに投資し得られる利益が非課税となる制度です。
2024年からは「新NISA」として制度が一本化され、非課税保有限度額や期間が拡充されました。
しかしこの制度は、「長期投資による資産形成」が前提であるため、すでにリタイア後にある高齢者層にとっては時間的な制約や資金の流動性などで利用しづらいという実情があります。
そこで浮上しているのが、「高齢者NISA」という高齢者向けに配慮した特別な非課税投資制度の創設案です。
3. 高齢者NISAのメリット・デメリット
高齢者NISAの【メリット】
1. 詐欺回避の選択肢になる
制度のもとで提供される安全性の高い投資商品を通じて、詐欺的な投資勧誘から高齢者を遠ざける手段になり得ます。
2. 資産運用の“安心感”が向上
制度によって守られた環境の中で、生活費や医療・介護に備えた運用が可能になります。
3. 非課税枠の柔軟な運用が可能に
高齢者のライフステージに即した短期・中期的運用(例:債券や安定型ファンド)への対応が検討されている点も魅力です。
4. 家族や専門家との連携も強化
相談体制が整えば、金融リテラシーに不安のある高齢者でも、安心して制度を活用できます。
高齢者NISAの【デメリット・懸念点】
1. 制度の複雑化と対象層の線引き問題
「高齢者とは何歳以上か」「年齢による投資制限は妥当か」といった議論が避けられません。制度が複雑化するとかえって混乱を招くおそれがあります。
2. “リスクのある投資”が過剰に正当化される危険
制度の名前を利用した「高齢者向けだから安全」と誤認させる詐欺的手法が逆に増えるリスクも。
3. 現行NISAでも高齢者は利用可能
すでに新NISAは年齢制限がなく、高齢者も非課税投資が可能です。わざわざ別制度を作る必要性を疑問視する声もあります。
4. 自己責任論が強調されかねない
制度が整備される一方で、「制度があるのだから、あとは自己責任」という風潮が強まる可能性もあり、教育や支援とのバランスが課題となります。
高齢者NISAは、高齢者の資産を守ると同時に、“詐欺に強い仕組み”として注目されているものの、年齢層を問わず広がる金融詐欺の実態を踏まえれば、世代にかかわらず金融教育や相談体制の強化が必要です。
投資を「危ないもの」として避けるのではなく、制度としての安全網の中で活用する。その第一歩としての「高齢者NISA」は、一考に値するアイデアではあるでしょう。
しかし、制度ができればそれで解決ではなく、誰もが安心して金融と向き合える社会をどう実現するか――今後の議論の焦点はそこにあります。
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